短歌リレー企画「つがの木」〜ネット歌人編〜第1回 御殿山みなみさん
新年明けましておめでとうございます！短歌プラットフォーム「さんばし」です。今年も応援よろしくお願いいたします。
さて、いよいよ歌人リレー企画「つがの木」が始まります！「つがの木」は歌人のみなさんに次々におすすめの歌人をご紹介いただくことで、知らなかった歌人に出会おうという企画です。今回はネット歌人編と学生短歌会編の二本のリレーを用意しています。
ネット歌人編のトップバッターは御殿山みなみさんです。
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自己紹介
はじめまして。結社無所属、主にインターネット上で短歌を書いております、御殿山みなみと申します。「つがの木」トップバッターということで、とても緊張しています。
1990年生まれ男性、この筆名は2016年2月からです。もともと言葉遊びをやっており、インターネット上には「ひざみろ」というハンドルネームでいますので、「ひざ」と呼ばれる方がしっくりきます。誰でも投稿できる短歌連作サークル『あみもの』の編集と発行を担当しております。ご興味のある方はぜひご参加くださいませ。
自選5首
だとしてもぼくはこうして錯覚で短く見えるほうの棒です
（合同歌集『ベランダでオセロ』より「半纏のひも」）
運転手さん前の車を追いかけて そのまま抜いて海へ向かって
（ウェブサイト「うたの日」投稿作品）
鏡も見ずにくちびるの下のひげを抜く指のなんたるＯＫサイン
（短歌連作サークル『あみもの』第三号より「面接のひげ」）
蹴飛ばしてしまった石が跳ねすぎて宇宙戦争始まったらどうしよう
（ネプリ『トライアングル』第３回より「すこし・ふあん」）
不渡りを出すこともなく死ぬのだろう十円安いパンに飛びつく
（discord歌会 提出作品）
今回僕がご紹介するのは、「かりん」所属かつインターネット上でも短歌活動をされていらっしゃいます、のつちえこさんです。
御殿山みなみが選ぶのつちえこの5首
長雨に明るい自販機打たれおり指先の熱移らぬ「つめた～い」
（「かりん」2018年1月号）
夕暮れに（サヨナラッの声 さよならの声 サヨナラって）夏鳥よ飛べ
（破調アンソロジー『藪』より「S/S」）
マヨネーズ照り焼きパンの もうずいぶん前にだめだと気づいていたが
（『chi』吃2号より「李とちー」）
湖にみずの匂いがすることを秘密と思う するから、電話
（短歌連作サークル『あみもの』第八号より「湖に触れ」）
アイコスっていうんですねと反芻し、それから長く喋らずにいた
（『Kaen』tabaccoより「Smoke without fire」）
歌のふり幅が結構あって一概には言えないのですが、文体としては硬派な接続を基調としつつ、字あけや読点を駆使して飛躍を持たせたり、文体とギャップのあるユーモラスな言葉・擬音・口語をねじこんだりする歌風が魅力的です。完全口語で安易に狙ってしまうようなところも固めの文法を意識されていて、総合して独自の文体をお持ちだなと思います。アンソロジーへの参加も積極的で、作品をいつも楽しみにしています。
引用歌に触れますと、一首目「つめた～い」の「～」のポップさがねじ込みとしてうまく機能しています（もちろん現実にその表記なのですが）。二首目のような実験的な短歌もあり。三首目は字あけが強力、そこで言葉が詰まってしまう表現がとても秀逸です。四首目五首目は散文的文法をとって言葉の外に含ませた関係性に圧倒されます。総じていつも試行錯誤の上で歌を組み立てておられる印象で、僕は同世代としてライバル意識を強く持っています。
また、discord歌会というインターネット上での新しい試みもされており、こちらも宣伝したいところです。もともとはゲーマー用の、ボイスチャットとテキストチャットを並行して展開できるアプリケーションなのですが、遠隔地の仲間内で歌会をするのに非常に適したシステムです。現状インターフェースに若干の慣れが必要な点は否めませんが、今後のインターネット上歌会の主流になりうるほどのポテンシャルを感じています。僕も時折参加させてもらい、気合を入れて歌を提出しています（さきの自選に入れてみました。初公開です）。
歌。そして活動。私見に過ぎませんがこれらを両立されている人が僕はやっぱり好きで推したくなるものです。こうしたリレー企画の魁に選んでいただき光栄に思いつつ、バトンをしっかりつなげてゆきたく書かせていただきました。
お読みくださり、ありがとうございました。
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御殿山みなみさん、ありがとうございました。
これからの更新予定です。
2018年1月16日（水） 学生短歌会編 佐々木遥さん
変更の可能性がありますので、Twitter＠sanbashi_tanka にて最新情報を確認してください。
短歌プラットフォーム「さんばし」 鈴木えて
