『さんばしvol.1』相互評 [評]なべとびすこさん [作品]しま・しましまさん
こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。
いよいよさんばしによる同人誌『さんばし vol.1』の発行日、11月24日が迫ってきました!
目次はこちらです。豪華なゲストにご注目ください。なんと80ページにもなってしまいました…!
ゲスト同士の相互評を公開していきます。
今回はなべとびすこさんに、しま・しましまさんの一首を評していただきました。
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やさしいとよわいは違ういちじくの樹液にふれてかゆくなるゆび(「幸せでもあるように」しま・しましま)
私は肌がよわい。だからこの歌にまず共感した。そう、果物の汁でかゆくなりがち。「いちじくの樹液」は別に攻撃性の高いものではないし、ましてや私たちを「かゆく」するための悪意を持った存在ではない。それでも、触れればかゆくなってしまう。それは単に自分が「よわい」からなのかもしれない。そして、作者の中で、「よわい」と「やさしい」は別物である。
よく考えてみれば、「肌がよわい」と言うことはあるが、「肌がやさしい」とは言わない。よわい肌に対して「肌にやさしい」下着やティッシュが売られることはある。「よわい肌」には「やさしく」してあげるべきなのだろう。
この歌で「やさしいとよわいは違う」と明言するのは、「やさしい」と「よわい」は一般的に間違えられやすい概念だからだと思う。
しま・しましまさんのnoteより、2018年の自選30首(https://note.mu/simashima/n/neede24e31dd8)より、この歌も引いてみよう。
蟹クリームコロッケフォークで割ってほらやさしいことはこんなにもろい
この2首だけを見ると、作者のなかで、やさしい=もろい≠よわい という論理になっているように見える。もしかしたら2018年から2019年で何か変化があったのかもしれないので、その論理はわからない。
ただ、「やさしい」という曖昧な概念について、何かしら誠実に向き合おうという姿勢を感じる。
さんばし「歌人リレー企画 つがの木~ネット歌人編~」で、ナタカさんはしま・しましまさんの作風に対して以下のように評している。
「しまさんの歌には、童話や童謡のようなやさしさがあります。どこか懐かしような、切ないような、けれどその切なさは胸を締め付けるような種類のものではなく、たとえば幼いころに大好きだったぬいぐるみの匂いのような、やさしい気持ちになる切なさです。」
https://sanbashi.hatenablog.com/entry/2019/04/03/210151
このように、ナタカさんの評にも「やさしい」というキーワードが出てくる。
ニセモノのやさしさが溢れる世界のなかで、誠実にいようとする姿勢がしま・しましまさんの作風にも現れているように思えてならない。
なべとびすこ
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『さんばし vol.1』は2019年11月24日の文学フリマ東京(公式サイト)にて発行されます。
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