『さんばし vol.1』の訂正とお詫び

こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。

 

11月24日の文学フリマ東京で頒布した『さんばし vol.1』に間違いが見つかりましたので、訂正いたします。

 

評論「改めて、学生短歌会とは何か」(髙良真実)中で「北大短歌会出身の二人が設立した同人誌発行所である稀風社」(p.67 下段)という記述がありましたが、

1:メンバーのうち北大短歌関係者は三上春海さんのみで鈴木ちはねさんは無関係である

2:稀風社設立は北大短歌会設立より早いので、時系列が異なる

という誤謬がありました。

お詫びして訂正いたします。

 

今後の販売につきましては、明日発送分より訂正ペーパーを挟む対応とさせていただきます。

 

改めてお詫び申し上げるとともに、三上さんのご指摘に心より感謝いたします。

 

鈴木えて

『さんばしvol.1』相互評 [評]石井大成さん [作品]川上まなみさん

こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。

 

さんばしによる同人誌『さんばし vol.1』の発行日、11月24日がついに明日になりました!

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目次はこちらです。豪華なゲストにご注目ください。なんと80ページにもなってしまいました…!

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ゲスト同士の相互評を公開していきます。

今回は石井大成さんに、川上まなみさんの一首を評していただきました。

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姉の眠りのなかを溢れてきた木々の枝がわたしにまで触れてきて

/川上まなみ「海まで」『さんばしvol.1』

冴えていることが、こんなにも寂しいと思う。おそらく近くで眠っている姉の息遣いや気配、みたいなものが「木々」となって生い茂り、主体に触れてくるのでしょう。そう認識する主体の意識はとても冴えていると思います。同じ空間に、眠る意識と覚める意識が共存していること、がこの歌の前提にある、ことがとても寂しい。

基本的に(少なくとも僕はそうなのですが)、一人でいると思考は深いところに行く。感受性が自分の内側に向く、感覚。そういう状況と作歌は相性が良くて、自分との対話がうまくいくと一首の密度が濃くなるような気がします。

クラシックバレエを辞めた足先の体の前の陽に触れたがる

/  同  「春を理由に」『岡大短歌5』

なんてことない足先の動きが日溜まりに触れるように感受される、みたいな世界とのかかわり方。川上さんの歌の中にはそういう「冴え」が、凛とした佇まいで存在していると思います。

 ここに別の意識が介入する、つまり状況が他者との対話になると、途端に意識がややこしくなる。当たり前と言えば当たり前なのですが。静物よりも動物のほうが絵にかくのが難しいと思いますし。ところが掲出歌は、他者がいるのに自分と対話してる、みたいな状況にあります。自分だけ眠っている、とか、そもそもの夜という状況とか、そういう寂しさの要因はたくさんある。ただ主体に意識の「冴え」がその寂しさに拍車をかけているのは間違いないと思います。木々は姉から伸びているように描かれている。しかし姉の気配を木になぞらえたのは主体自身で、とらえ方によっては主体の冴えが姉の存在、その輪郭に干渉している、ようにも見える。きっと夜は長いでしょう。寂しいなあ。

 

石井大成

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『さんばし vol.1』は2019年11月24日の文学フリマ東京(公式サイト)にて発行されます。

その後通販も開始予定です。

こちらのフォームにメールアドレスまたはTwitter IDを登録いただくと、通販開始時にメールまたはDMでお知らせいたします。買い逃したくない方はぜひご登録ください。

 

『さんばし vol.1』の最新情報はさんばしのTwitterをご覧ください。

 

『さんばしvol.1』相互評 [評]御殿山みなみさん [作品]菊竹胡乃美さん

こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。

 

いよいよさんばしによる同人誌『さんばし vol.1』の発行日、11月24日が迫ってきました!

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目次はこちらです。豪華なゲストにご注目ください。なんと80ページにもなってしまいました…!

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ゲスト同士の相互評を公開していきます。

今回は御殿山みなみさんに、菊竹胡乃美さんの一首を評していただきました。

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 産むことをいやがる雌の鶏を抱くわかりたいよ同じ女として /菊竹胡乃美

 

 

 下句の「わかりたいよ」に惹かれた。韻律としては「わかりたいよ/同じ/女として」と三分割されているように読めるが、拍数が下句相当であるのでそこまで違和感なく読める。「わかりたいよ」とふくらむような音と意思が強靭で、しっかりと実感のアクセントが効いている歌だなと思う。

 引用歌の収められている連作は、主体自身が女性であることに関連した思索の垣間見える歌を中心に構成されており、引用歌も同カテゴリのイデオロギーが込められている。上句、主体は鶏を抱いていて、それは産むことを義務付けられている鶏のようだ。畜産業的なそれなのかもしれない。推測だが、この鶏は産まなければいけない鶏であるような気がする。

 それに対して主体が人間の女性に置き換え、出産について思考していることは明らかだ。ただ、そこで示されているのは「わかりたい」の願望であって、「わかる」の断定ではない。むしろ、この鶏を主体はわからないのである。

 それでも、主体が鶏を通じて、女性/雌という属性に宿る/宿らされている「出産」というある種のシステムに、疑義を持っていることは伝わるし、主体はそこの把握を正直に、自分を取り巻く人間のシステムに関しては間違いなくこうだ、と思っていることを、鶏に安易に置き換えず、それでもその文脈で語りたい、という態度を明示している。その方が、真摯である。

 きっと鶏の「いやがり」を「わかる」と言ってしまって人間社会を詠うと、反論はないだろうが反感として「鶏のなにがわかる」というものを持たれうるのだろう。その領域には安易に踏み込まず、そのうえでパラレルな構造の提示をしているのが、強い。なにせ、「わかりたい」ではあるものの、その鶏は「同じ女」なのだから。

 

 御殿山みなみ

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『さんばし vol.1』は2019年11月24日の文学フリマ東京(公式サイト)にて発行されます。

その後通販も開始予定です。

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『さんばしvol.1』相互評 [評]菊竹胡乃美さん [作品]石井大成さん

こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。

 

いよいよさんばしによる同人誌『さんばし vol.1』の発行日、11月24日が迫ってきました!

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目次はこちらです。豪華なゲストにご注目ください。なんと80ページにもなってしまいました…!

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ゲスト同士の相互評を公開していきます。

今回は菊竹胡乃美さんに、石井大成さんの一首を評していただきました。

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海の近い町の上り坂がつづく 電話の向こうで君は泣いてた

石井大成「夏と静物

 

どうして泣いてるんだろう、なにが君を泣かせてるんだろう。理由のわからなさ、泣いている君へ感じる距離、君と主体の心境のギャップ。それを上句の情景がよく表していると感じる。また、連作内で出てくる風景・町中の物たちはみんな静物として存在している感じがした。主体はそれらに囲まれている。そして君もまた静物としてそこに在る。絵画のモチーフのように静かに存在している。主体と君の淡々とした孤立感、周囲に対する淡々としたさびしさ。読み手の胸に砂のように残っていく。

 

菊竹胡乃美

 

 

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『さんばし vol.1』は2019年11月24日の文学フリマ東京(公式サイト)にて発行されます。

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『さんばしvol.1』相互評 [評]なべとびすこさん [作品]しま・しましまさん

こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。

 

いよいよさんばしによる同人誌『さんばし vol.1』の発行日、11月24日が迫ってきました!

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ゲスト同士の相互評を公開していきます。

今回はなべとびすこさんに、しま・しましまさんの一首を評していただきました。

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やさしいとよわいは違ういちじくの樹液にふれてかゆくなるゆび(「幸せでもあるように」しま・しましま)

 

私は肌がよわい。だからこの歌にまず共感した。そう、果物の汁でかゆくなりがち。「いちじくの樹液」は別に攻撃性の高いものではないし、ましてや私たちを「かゆく」するための悪意を持った存在ではない。それでも、触れればかゆくなってしまう。それは単に自分が「よわい」からなのかもしれない。そして、作者の中で、「よわい」と「やさしい」は別物である。

 

よく考えてみれば、「肌がよわい」と言うことはあるが、「肌がやさしい」とは言わない。よわい肌に対して「肌にやさしい」下着やティッシュが売られることはある。「よわい肌」には「やさしく」してあげるべきなのだろう。

 

この歌で「やさしいとよわいは違う」と明言するのは、「やさしい」と「よわい」は一般的に間違えられやすい概念だからだと思う。

 

しま・しましまさんのnoteより、2018年の自選30首(https://note.mu/simashima/n/neede24e31dd8)より、この歌も引いてみよう。

 

 

蟹クリームコロッケフォークで割ってほらやさしいことはこんなにもろい

 

 

この2首だけを見ると、作者のなかで、やさしい=もろい≠よわい という論理になっているように見える。もしかしたら2018年から2019年で何か変化があったのかもしれないので、その論理はわからない。

ただ、「やさしい」という曖昧な概念について、何かしら誠実に向き合おうという姿勢を感じる。

 

さんばし「歌人リレー企画 つがの木~ネット歌人編~」で、ナタカさんはしま・しましまさんの作風に対して以下のように評している。

 

「しまさんの歌には、童話や童謡のようなやさしさがあります。どこか懐かしような、切ないような、けれどその切なさは胸を締め付けるような種類のものではなく、たとえば幼いころに大好きだったぬいぐるみの匂いのような、やさしい気持ちになる切なさです。」

https://sanbashi.hatenablog.com/entry/2019/04/03/210151

 

このように、ナタカさんの評にも「やさしい」というキーワードが出てくる。

ニセモノのやさしさが溢れる世界のなかで、誠実にいようとする姿勢がしま・しましまさんの作風にも現れているように思えてならない。

 

なべとびすこ

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『さんばしvol.1』相互評 [評]しま・しましまさん [作品]御殿山みなみさん

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今日からは、ゲスト同士の相互評を公開していきます。

今回はしま・しましまさんに、御殿山みなみさんの一首を評していただきました。

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エアシャーペンのノックをしてるやつみんな爆弾魔だろ 見たことはない

御殿山みなみ(『さんばし』vol.1「ハンドサイン」より)

 

 実際に「エアシャーペン」をノックするしぐさをしてみると、爆弾の遠隔操作といわれればたしかにそういう感じがします。誰かがそんな仕草をしたのを見て、作者はふとそういう連想をしたのかもしれません。そこから「エアシャーペンのノックをしてるやつ」の「みんな」と一般化させて、単発かもしれない「爆弾」ではなく「爆弾魔」としているところがまず面白いと思いました。四句目の「だろ」という推定というよりはその断定に同意を求めるような助動詞から、そうであってほしいという気持ちが窺えるような気がします。爆弾はロマンと言ったら語弊があるかも知れないけど、あちこちで幻の爆発が起きる、あるいはどこか自分の知らない場所で爆発が起きているのかも知れないと想像することは、少しだけニヤリとさせられるような気がします。そこからの一マスあけての結句「見たことはない」で、ふいに突き放されるような気持ちにさせられます。それまでのフレーズを混ぜ返すような「いやしらんけど」的なゆるい予防線とは趣の違う「見たことはない」という冷静なつけたし方。やすやすと共感させてやらないよと、読者と境界線を引いているような結句があとを引く一首と思いました。

しま・しましま

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『さんばし vol.1』は2019年11月24日の文学フリマ東京(公式サイト)にて発行されます。

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データを先行公開!【評論】「改めて、学生短歌会とは何か」髙良真実(「さんばし vol.1」掲載)

こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。

 

新しい短歌シーンに注目する同人誌「さんばし vol.1」が11月24日の文学フリマ東京で発行されます! 

豪華ゲストを迎え、インターネットを基盤とした場に代表される、比較的新しい短歌活動の動向を鋭く分析する内容になっています。

(内容は創刊のお知らせをご参照ください、近日中に目次を公開予定です)

 

今回はそこに掲載される評論のひとつ、早稲田短歌会の髙良真実さんによる「改めて、学生短歌会とは何か」に含まれるデータを先行公開いたします!

こちらの評論では、さんばしが注目してきた場のひとつである学生短歌会について、まずその歴史を振り返り、それから学生短歌会が注目されるという現象の分析を行います。

学生短歌会の現在の位置づけを記録し、分析するという意味で非常に意義深い評論となっています!

 

見どころのひとつは、今までありそうでなかった学生短歌会の活動状況一覧や新人賞の受賞状況などが分かりやすく表にまとまっている点です。

この素晴らしい資料をインターネット上でも公開することでこれからの短歌シーンの分析に資することができると考え、先行公開を決めました!

 

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まずこちらの表1は、早稲田短歌会の機関誌における口語短歌と文語短歌の比率をまとめたものです。

 

 

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こちらは学生短歌会の活動状況を一覧にしたもので、この評論の資料的価値を確かなものにしています。

 

 

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評論では学生短歌会が注目されるという現象について、主な結社と新人賞の受賞状況を比較するという形でも分析をしています。

 

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これらの資料からどのような論が展開されるのか、詳細な分析は11月24日の「さんばし vol.1」発行をお待ち下さい!

 

文学フリマ東京公式サイトはこちら

 

「さんばし vol.1」は11月24日以降に通販も予定しています!

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