クラウドファンディングでの歌集出版〜鈴木智子さん『砂漠の庭師』出版記念インタビュー〜

こんにちは、短歌プラットフォーム「さんばし」です。

「さんばし」では先日クラウドファンディングで歌集を出版された鈴木智子さんにインタビューさせていただきました。

クラウドファンディングでの歌集出版はとてもおもしろい試みだと思うのでご紹介できて嬉しく思います。

とても具体的にお話いただいたので、役に立つ内容になりました。ぜひ御覧ください。

 

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鈴木えて(以下E):今日はありがとうございます。まずは宣伝の方からお願いします。

鈴木智子(以下T):先月12月3日に鈴木智子の第一歌集『砂漠の庭師』が発売になりました。こちらデザインエッグ社と言うとてもお安い出版社の方から出しました。こちらはクラウドファンディングを使って資金を集めて出版するに至りました。内容は、340首の短歌と詩が3編、あと写真なども交えて作りました。解説には加藤治郎さんと土井礼一郎さんをお迎えして作りました。

E:写真もお一人でやられたんですか?

T:そうですね。表紙も全体デザインも選歌とか編集とか校正もそういうの全部一人でやりました。

E:そういう経験とかがおありなんですか?

T:去年の初旬のころにアンソロジーは作ったんですね。なので編集というのは一応経験していたんですけれども。

E:もっと出版社に任せてという形かと思ってました

T:デザインエッグ社というのは安いだけあってすべて原稿を作ってください、原稿提出して出版社側ではもう印刷するだけみたいな感じなので、印刷してあとAmazonで販売する手続きを取るくらいなので。本当は表紙なんかは誰かイラストレーターさんとかに頼もうかなと思ってたんですけども、やっぱりその分お金がかかったりとか、あと希望の方に断られてしまったとか言うのがあって、私も絵を書いたりとか写真をかなりやるのでそれも生かせるかなというのは思って一人でやりました。

E:得意なことを生かせた感じなんですね。クラウドファンディングっていうのは要するにインターネット上で目標があってそれを提示して支援をもらうって言う形になるんでしょうか?

T:そうですね。クラウドファンディングをやってる会社は今何社かあるんですね。なので話を聞いてもらってやってもらえそうなところを探してという感じです。

E:なんかカウンセリングみたいなのが最初にあるんですか?

T:結構あります。どういうことやりたいのかはもちろんですけど、宣伝はどのくらいできそうか、あとツイッターのフォロワー何人ぐらいますかとかそういうことまで聞かれましたね。

E:それで断られることもあるんですかね?

T:ありますね。あと会社によってはすごく厳しいところもあって、出版の日にちまで決めないととか、具体的に何ページの本を作るとかそういうのが決まってないとできませんって言われたところもありました。さすがに日にちまではちょっと私も読めなかったのでそういうところではちょっとできないなーって感じですね。

E:何社くらい検討されたんですか?

T:2社ですね。全部では5、6社は検討しましたね。実は今回のプロジェクトが成立する前に同じプロジェクトを一度やってるんですが、目標金額が高すぎて達成できなかったんです。それで目標金額を下げてやりました。

E:いくらくらい集まったのかうかがってもいいですか?

T:大体15万くらいです。

E:そうなんですか!

T:この安さは本当にそのデザインエッグ社というところだけだと思います。普通の出版社だと30万ぐらいはして、そっちにしようと思ってて目標金額を30万ぐらいにしてたんですけど、するとやっぱり目標が達成できなくて、調べたらMyISBNっていう名前でやってるんですが、そこがすごいほんとに安いんでそこにお願いしました。ただやっぱり結局評を書いてくださった方に謝礼を送ったりとか、あと買い取りが一番お金を取られましたね。クラウドファンディングしてくれた方にお礼として送る分とか、短歌雑誌などマスコミ関係、後は図書館に寄贈したりとか、売ってくれる本屋さんとかに委託したりとかというので結構とられちゃって。

E:クラウドファンディングで支援してもらった人に本を返すという形の約束だったんですね。

T:クラウドファンディングは基本的にリターンと言って支援した方に何かしらの形でリターンしないといけないっていうのが普通なので、それでやっぱり歌集っていうのが私はリターンの品だったので。

E:条件としてはそれだけだったんですか?

T:そうではなく、私は写真×短歌みたいな本を出してるんですけど、それは印刷会社からやってるんですけどそれをつけたりとか、後は批評会やる時に無料になりますという券をつけたりとか、まだ未定なんですけどそのうち1、2年ぐらいの間に批評会をやりたいなと思ってて。

E:金額によって分けたんですね。クラウドファンディングの登録っていうのは結構大変な道のりですね。

T:意外と面倒ですね。やりたいことがあるなら全然苦ではないんですけど、プロジェクトページとか作らないといけないし、詳しいリターンを設定したりとか。

E:手続きに何ヶ月ぐらいかかったんですか?

T:これも会社によりますね。私が早めにやりたいみたいなこと言ったら割と早くやってくれて、申し込みから2週間とかそのくらいでプロジェクトが始まったんですよね。

E:やる気があれば、やりたいことがあれば苦ではない感じですね。どのくらいの方に支援をいただけたんですか?

T:21人ですね。

E:すごいですね!それはどういう宣伝をしたとか、何がよかったとかあると思いますか?

T:ネットの宣伝が主でしたけど、結構友達とかに一斉送信とかでメールを送ったりしました。ちょっと抵抗あるんですけどね。いろいろ言っていられない状況かなと思って、まぁ興味があればくらいでメールして。そこで結局何人かやってくれた人がいるのでほんとに助かりました。

E:手は尽くしてみるものですね。

T:ネットとかですごい活躍してる方とか有名な方だったらもっと集まると思いますよ。例えば鈴掛真さんはクラウドファンディングを同じ時期にやって、あの方はかなり集めたと思います。だから人とかやり方によってはもっと集まる人は集まると思います。

E:ネットの宣伝は主にTwitterですか?

T:Twitterですね。ブログとかにも書きましたけど結局見る方は同じなので。

E:フォロワーは今何人ぐらいらっしゃるんですか?

T今400人ですけど、当時はまだ300ちょっとぐらいしかいなかったと思います。

E:やっぱり最初にフォロワーを増やしておくことが大事なんですかね。

T:それはあるかもしれないですね。ちょっと増やしたりしました。

E:自発フォローしてですか?

T:おすすめユーザーとか「かばん」の人とかで知ってる人をとりあえずフォローしてみたいな。

E:なんでもともとフォロワーが多いんですか?お知り合いが多いんですか?

T:短歌を長年やってるからだと思いますね。長年やっててやっぱり「かばん」に入ってるし、私結構自分の心がけとして人脈をできるだけどんどん広げていきたいっていうのがあって、宣伝に使いたいからとかそういうわけじゃなくて人脈はやっぱり広くて多いほうがいいなというのはすごく思ってて、チャンスが広がったりとかしますしね。やっぱり長く活動していることも大事なんでしょうね。

E:宣伝ツイートってどのくらいしたらいいか分からないじゃないですか。タイミングとか心がけたこととかありますか?

T:時間帯とか絶対夜のほうが、7時8時とかのほうがいいとかですかね。でもそんなにないですけどね。

E:クラウドファンディングをやってみてここここは苦労したみたいなこととかありますか?

T:やっぱり批判する人がいたっていうのが落ち込みました。

E:そうだったんですか。

T:批判されることがありましたね。しかも何人かいました。やっぱり私は賞とか獲ってないんで、それなのにお金集めて出すのかよみたいな感じがどこかあったりとかするんでしょうね。

E:今は賞を取ってから出す流れはありますもんね。それに引っかかってしまう方もいるんですね。逆にこれはうれしかったみたいなことはありますか?

T:やっぱりすごく応援してくれたりとか、繰り返しリツイートしてくれたりとか、そういう方がいるのは嬉しかったですね。味方みたいな、この人だったら安心して頼れるみたいなそういうことがあったりとかしました。

E:なんかそれで仲良くなれる人もいそうですよね。

T:そうですね。結局その人に誘っていただいてまた人脈が広がって、ということだったので、そういう意味でよかったかなと思いますね。

E:歌集を出すことでまた広がる世界、ということですね。

T:それはもちろんあると思います。

E:ところで資金が集まってからどういう流れになったんですか?

T:実は思ってたよりほどは集まらなかったっていうのがあって、どこでどういう風にお金を使うと15万くらいで収まるかなっていうのは計算して、やっぱり出版社変えたりもしましたし。80冊ぐらい買い取りしたんですけど何冊ぐらい買い取りできるかとか計算したりして。あとは実際に作っていった感じですね。自分で一覧表を作って選歌して並べ替えて編集作業して。

E:編集はWordですか?

T:そうですね。

E:Wordでできるものなんですね。

T:それで結局最後PDFにしてっていう感じですよね。

E:原稿ができてから出版社に依頼するっていう形なんですか?

T:そうでしたね。

E:加藤治郎さんとかに評を頼んだっていうのはメールとかでお願いしてって感じなんですか?

T:いや、お会いしたいと思ったので去年の6月に名古屋のイベント、ニューウェーブ30周年のときにお会いしてお願いしました。

E:出版社は原稿を出してから打ち合わせという流れなんですか?

T:打ち合わせはしないです。原稿出したらそのまま印刷とAmazonへの登録になります。

E:なるほど。クラウドファンディングで歌集を出したというのを拝見して、すごくいいやり方だと思ったんですよね。それでみなさんに紹介したいと思って。

T:そうですね。みんな出したいけど出せないって言っているのが何か方法ないのかなと思っていて、クラウドファンディングで本を出して有名になっている人を見て、出したいけどお金がなくて無理な人はそういうのもありじゃないかなっていうのはすごく思っていて、もうちょっとこういう方法が一般的になればいいのになあとは思っていますね。今は私家版出してる方もいますけど、それだと詩歌専門店に委託することになるので。東京だとあんまりないですよね。

E:Amazonでも売れるっていうのは強みですよね。

T:田舎に住んでる人にも手に取ってもらえる機会というのもあるので、結局それくらいで出せるんだったらみんなも出せばいいのにと思ったりしますね。でも私もいろんな書店に本を置いてくれないか頼んだんですけど、大型書店は結構無理なんですよね。そういう意味では私家版と割と同じ扱いっちゃ扱いですけど、Amazonで売れるっていうのは結構強みかなと思いますね。

E:じゃあいろんなお店に連絡取ったりはされたんですね。

T:今のところ置いてもらってるのは2箇所しかないです。札幌のがたんごとんさんと大阪の葉ね文庫さんです。

E:ちなみに値段ってどうやって決めたんですか?

T:そこはMyISBNが決めるんですね。最低ラインが出ててそれ以上ってできるんですけど、売りにくくなるのはわたし的には嫌だったので最低ラインでってなりました。本当はもっと個人的には安く売りたかったんですけど。

E:部数は自分で決めたんですか?

T:予算内で何冊まで買えるかなっていうの計算して決めました。でも今全部はけちゃって追加発注しようと思ってるので、結局クラウドファンディングよりは足が出ちゃってるんですけど。

E:なるほど。最後に宣伝とメッセージをお願いします

T:内容的には安く作りましたけどかなり充実したものを作ったので、解説の方なんかもよく解説してくださってますし、結構読み応えのある本だと思います。読んでくださった方にはわりと評判よかったりしたので、もしよろしければお手に取っていただきると嬉しいです。ありがとうございました。

E:ありがとうございました。

 

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個人的にはクラウドファンディングで歌集を出版する、という選択肢がもっと一般的になってもいいと思っています。

みなさんが歌集を出版したいと思ったときに、選択肢の一つとして心に留めておいていただければ幸いです。

 

 

 

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